哲学的&歴史的視点から見た改正派遣法の意義

自民党が衆議院選挙で圧勝しました。2度廃案となった改正労働者派遣法も4月には審議開始されて、2015年9月までの成立が目指されているようです。

すこしオーバーですが、改正労働者派遣法について、哲学的&歴史的視点で論じてみました。

なお、()の中は、参考となる思想家、及びその概念をあらわす言葉です。興味のない方は()は読み飛ばしてください。

哲学的&歴史的視点から見た改正派遣法の意義

そもそも原始時代ではすべての人間は自由であり、誰にも束縛をうけていなかった。

しかし、それでは争いが絶えないので、だれかを選らんで統治してもらうようになった。

(ホッブス、「万人の万人に対する闘争」)

そうすると統治者は支配力を強化し、軍隊などもって、民衆を抑圧するようになった

(ホッブス、リヴァイアサン)

王権神授説などを振りかざして、王となった統治者は正当性を主張した。

しかし、そもそもよく考えると、出だしは、民衆が統治者に対して統治をゆだねたことであったことを考えれば、

(ジョンロックやルソー、社会契約論)

民衆を抑圧するような王様は打倒すべきだ、という考えがフランス革命を引き起こした。

フランス革命後、絶対王政の圧政から解放された民衆は自由に契約していくが、今度は産業革命で、資本家に民衆が搾取されるようになった。

自由競争で努力したものが資本家になって、労働者を搾取してなにが悪い、、、という考えがはびこった。

(アダムスミス、見えざる手)

しかし、何かおかしい。

労働者は、労働時間を貯金できないので、やむにやまれず低賃金でも働いてしまうという点で、資本家に比べて弱い存在である。

これを守るべきだということで、労働組合ができて、資本家と対等に交渉し、労働者の賃金があがっていった。

そこに丁度タイミングよく、大量生産革命がおきた。

正社員を大量に抱え、どんどん生産し、賃金も増えて、購買力が高まり、大量生産していったものがどんどん売れるという好循環が構築された。

(ケインズ、有効需要の理論)

しかし、それも長くはつづかなかった。みんなが車をもってテレビももって、、、とある程度消費財が行き渡ると、景気変動の波が激しくなっていった。

そうすると、正社員を抑制し、かわって、派遣や請負などの外部労働を調整弁としてつかうようになった。

政府も規制緩和をおこない派遣社員や有期雇用社員はどんどん拡大していった。

正社員は、解雇権濫用の法理や労働組合等で守られていたが、派遣や請負社員は弱い立場であり、派遣・請負会社も小規模会社が多く、適切な処遇向上を実現しようにも大企業との交渉力が弱い。

その結果、外部労働者の処遇は全然上がらない。正社員抑制で正社員は高齢化が進み、外部労働者はキャリア形成が不十分でこのままでは労働市場がおかしくなってしまう。

外部労働から正社員への移行をあの手この手で政府は支援するが、厳しい競争環境でなかなか正社員化は進まない。

これではまずいということで、せめて派遣・請負会社を強くするために、大手派遣会社を育成し強化しようとしているのが、2015年10月に施行が予想される改正派遣法の意義であると考えている。

改正派遣法の骨子の抜粋:

★派遣事業の届出制の廃止&認可制への一本化

★派遣会社の資本要件の規制強化

★派遣会社のキャリア形成支援力の重視

★無期雇用派遣の期間制限の撤廃等

規模の大きい提案力のある派遣会社が育成され、大企業と会社対会社で協議し、最適な正社員・外部労働者の在り方を考えることでより理想の労働市場に近づくのではないかと考えられる。

原始時代から現在に至るまでの、労働者&民衆 vs 統治者&支配者の関係を考えることで、改正派遣法の歴史的は意義が改めて深く理解できるのではないかと思う。

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